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浴室内見守り用電波センサの研究開発

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【研究背景】

高齢化が進むにつれ家庭内での高齢者の事故が増加し,その中でも浴室内での事故死が多くを占めています.例えば,平成23年では約17,000人が入浴中に死亡しており,その多くは11月から3月までの寒い時期に浴室内外での急激な温度変化によるヒートショックが原因であると考えられています.そこで予防策として入浴前に脱衣所や浴室内温度を上げ,体温との差を少なくしておくことが重要であると指摘されています.しかしそれでも浴室内事故は増加傾向にあり,今後さらに増えると予測されます.

一方,浴室内での転倒や失神などの事故を速やかに検知する対策技術については多くは検討されていません.例えば,これまで赤外線や画像などによる非接触センサが提案されていますが浴室内の蒸気や体温と同じ浴水温度,湯面変動,プライバシー侵害などの理由でほとんど実用化されていません.そこで本研究室では,以下に示す利点から電波センサと入浴者の状態推定アルゴリズムを組み合わせた浴室内見守りセンサを提案しています.

・ 高温の浴水や蒸気の影響を受けない

・ プライバシーを侵害しない

・ 浴室内の動きだけでなく,転倒や溺水などの状態を検知識別することが可能

・ 他の無線システムからの干渉を受けない

【研究内容】

 浴室内では図1に示すようにヒートショックによる“めまい”や“ふらつき”による転倒と浴槽内での溺水などの事故が考えられます.そこで浴室内で動いているか静止しているかだけでなく,転倒や溺水の状態などの危険状態を素早く検知することが必要です.本研究室では浴室内の危険状態の早期発見を目的とした電波センサを開発し,実証実験を行ったのでその一例を紹介します.図2のように浴槽付近の壁に埋め込んでいる浴湯コントロールパネル内に小型平面アンテナを設置し,入浴者の状態を検知します.尚,実験ではアンテナからの信号は浴室外に設置したセンサ装置で取得及び検波し,PCで入浴者の状態をモニタリングしました.図3にその結果の一例を示しています.(a)は取得データの一例で,横軸が観測時間,縦軸がアンテナからの距離,また受信信号強度が強く出ている部分は入浴者による変動です.更に入浴者の軌跡をピンクの矢印で示しています.このデータでは,入浴者は観測開始から約50秒で浴室内に入室し,その後浴湯に浸かります.そして後半の約170秒付近で湯槽から出て転倒し,危険状態に陥っています.(b)はそれらの行動を状態推定アルゴリズムで解析した結果で,入浴者の行動を“危険”,“動き無し”,“動き有り”,“無人”の4つの状態に分けて推定しています.青の実線は入浴者の実際の行動,そして赤の破線は推定した状態を表しています.図3から推定した結果は数秒の処理遅延が見られるが,激しい湯面変動の中でも入浴者の状態を検知していることがわかります.

2.3_1-1
2.3_1-2
(a)溺水 (b)転倒

図1 浴室内事故の例

2.3_2

図2 測定環境

2.3_3-1

(a)取得データ

2.3_3-2

(b)推定結果

図3 実験結果